学習・生活・コミュニケーションに困難がある人のための相談室
Director’s talk No.1

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「子どもの個性」

学校には「明るく、仲良く、元気よく」といった標語が貼ってある。「暗く、一人で、おとなしく」という標語は見たためしがない。どうしてだろうか?親もその環境で育ってきたため、自分の性格はどうあれ、子どもには「明るく、仲良く、元気よく」を望む。みんな性格や認知特性が違う訳だからそんなに明るく元気に毎日できる訳ではない。

暗く静かで友達ができない子どもは親も子ども自身も心配になる。一方、元気が良すぎる子どもやいつも一人で過ごす子どもも問題視されやすい。そして先生の手に負えないと、発達の専門機関に相談を勧められ、多くの子どもは診断名をもらうことになる。そこで、なぜ上手くいかなかったのかやっと理由が分かったと親も子も安心し、医療機関で投薬を受ける子どももいる。果たしてそれでいいのであろうか?

 

「教室内で多動で困っているのですが?」と尋ねると「ADHDかもしれません」と答える専門家がいる。

「勉強が分からないからゴソゴソしているかもしれないとは考えられないですか?」と問うと、「それならLDかもしれません」と言う。

「それならなぜ勉強が分からないのですか?」と問うと、「LDだから読みが苦手なのかもしれません」と言う。

「それならなぜ読めないのですか?」と問うと、「ADHDで集中できないからです」。

 

堂々巡りで全く意味がわからない。そんな会話を聞くと私の怒りは爆発する。

診断名をつけて説明するだけで結局様々な悩みの関連も分からず、前に進まない。ゴソゴソするなら個別に分かる話をしてみたらいい。静かな環境で授業してみたらいい。教材を分かるものに変えてみたらいい。漢字を書くのが遅いなら時間をゆっくりかけたり、タブレットを活用してみたらいい。そんな介入を比較してみるとその子どもがどうやって学べばいいかがわかってくる。彼らは病気や障害ではない。人と違った学びが合っているだけである。

「人と同じでなくていいよ。人と同じ訳がないんだから。」と言いながら子どもを育てればいい。そんな関わり方が、自分が好きで人のやらないことを堂々と進めていける子どもを育てて行く。学校で人と違うことを指摘されたらそれはチャンスだと思ってもいいかもしれない。そんな親子を僕たちは応援し続けたい。