学習・生活・コミュニケーションに困難がある人のための相談室
Director’s talk No.2

Director’s talk No.2

社会性と優しさ

子どもを育てにくい時代である。社会が忙しくなり大人も子どもも社会も余裕がない。何か学校で問題があればすぐに先生から連絡がある。

「何度注意しても忘れ物が多いので家でもちゃんと指導して下さい」と先生は言うが、家で何度も叱っても子どもは変わらない。親子ゲンカがひどくなるだけである。そんな子どもたちも出かけるときにゲーム機やスマホは忘れない。意識が向いているかどうかの問題であることが多い。忘れ物は本人の責任なので忘れたら本人が困るような事態を作ればいいが、そうならないように親や教師が先回りするため、彼らは一向に困らず意識はそこに向かない。言い換えれば注意が向いた物に対しては人一倍集中する子どもたちでもある。

子どもの個々の良さに着目する余裕がなくなり、集団の中で何が求められるかを第一に考えて子育てすることが社会で求められる。近代化社会は都市化し、時間をスケジュール化することで効率化をはかり、発展を遂げてきた。そんな社会は人や情報に溢れ忙しい。様々なものに気を配り、目を向けるのは疲れることでもある。都市化しスケジュール化した社会は実はほとんどの人にとってストレスフルなことに違いない。社会に気を使いすぎるからこそ大人になって心を病むのかもしれない。実は、自分の興味にしか目を向けない子ども達はある社会的ストレスを感じにくい強い性格とも言える。

私は、周りに気を配るよりも、人に対する優しさをまずは教えるべきだと思う。ホームレスの人たちを社会から外れたかわいそうな人と哀れむよりも、これまで生きにくさを感じてきた一人の人として話しかける優しさが必要だと思う。今の社会性の教育は人への優しさを奪うもののように感じられる。